原点に帰る

　やる気が失われているときには、しばしば自分がそのことをやっていることの意味を見失っていることが多いものです。
　もともと私がやる気の研究を始めるきっかけになったのも、かつていい成績を上げていたスポーツ（陸上競技長距離）で、身体を壊したこともあって全く成績が振るわなくなり、走る意味を見失ってやる気を失ってしまったからでした。
　このように成績が上がらなかったり、仕事がうまくいかなかったり、忙しさに流されてやることが惰性になったりすると、うまくいっていたときには考えなかった、「こんなことやったって意味がないのではないか？」という疑問がふつふつとわいてくるものです。
　このような心の中の疑問をそのまま放置しておくと、やる気は確実に失われていきます。かつてある高校でやる気をアップさせるためのメンタルトレーニングをしたときには、実はけっこうな生徒たちが意味を感じられずにクラブをやめようか悩んでいたということがわかってびっくりしたことがあります。
　こんなときに有効なのが「そもそも」という言葉を使った自分自身への問いかけです。「そもそも自分は何のためにこんなことをしているのか！？」と改めて考えることで、やるべきことが明らかになり、それによってやる気も回復する糸口をつかむことができるのです。
　実はさきほど示した高校でのメンタルトレーニングも、この「そもそも何のために？」の問いかけを行うことでやる気の向上を狙ったもので、実際ある生徒は、「いろいろ悩んでいたけれど、もう一度原点に帰ってがんばってみようと思えた」という感想を書いてきてくれました。
　「そもそも何のために？」というこの問いは、私たちを原点に戻し、やる気を回復させる強力な力を持っていると思います。

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